記事一覧

発達障害の人と「良い関係」を保つコツ

170624-1.jpg

(毎日新聞「医療プレミア」・08/02)

工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長


 前々回、前回と2回にわたって発達障害についてお話ししてきました。疫学調査の結果から、注意欠陥多動性障害(ADHD)は成人の1.65%が抱えており、自閉症スペクトラム障害に含まれるアスペルガー症候群を抱える人は人口の1%と言われています。つまり、これらの発達障害は決して珍しくはありませんし、私自身の経験からはもっと多いのではないかと感じています。
 いずれも現在の治療選択肢は限られ、短期間で劇的に改善するものではありません。そうした観点から、私はこれらの発達障害について知るだけでは不十分で、周囲が接し方を学ぶことの方が重要ではないかと考えています。
 そこで今回は、周囲がこれらの発達障害の人に接するうえで念頭に置くべきことや「してはいけないこと」についてお話ししたいと思います。


集中している時に遮らない

 まず、ADHDもアスペルガー症候群も大なり小なり特定のことにこだわり、集中的に取り組む傾向があります。周囲からすれば、「そこまでしなくとも」「いまはそれよりも先にすべきことがあるのに」と思うことがしばしばあります。ただ、そうした時にいきなり制止することは禁物です。
 車の運転に例えましょう。猛烈な勢いでアクセルを踏み込んで加速している最中に突如ブレーキを強く踏んだらどうなるでしょう? 車はスピンして制御不能になり、最悪横転ということもあるはずです。
 ADHDやアスペルガー症候群の人が何かに夢中で取り組んでいる時はアクセルを踏み込んでいる状態です。やみくもにそれを止めると、本人は混乱し、時には極度の興奮状態になり、止めた相手に食ってかかりがちです。止めた側がこれに応酬したら、めちゃくちゃな状況になります。


とにかく丁寧に説明する

 こうした時はワンクッション置くことが重要です。ADHDやアスペルガー症候群の人が集中から解けるのを待って、あるいは何かに集中する前に、よりプライオリティー(優先順位)の高いことは何かを懇切丁寧に説明しましょう。ADHDやアスペルガー症候群の人は知能的に問題があるわけではないので、順序立てて説明すればきちんと理解してくれます。この際に、過去に同様のことがあった時のことを持ち出して非難めいた言い方にならないように気をつけましょう。

 もし、どうしても集中していることから別のことに移ってほしい時は、互いに納得するゴールを決めて、そこまでは今やっていることに集中して取り組んでもらいましょう。そのゴールの段階で優先順位を話し合えばよいと思います。
 もっとも一気に集中する特徴は変わるわけではありませんので、周囲も根気よく繰り返し説明しましょう。改善が見られたときは「改善を確認したよ」というメッセージをはっきりと伝えることも必要です。
 また、職場では、本人が集中しやすい業務を担当する部署に配置する「適材適所」も必要だと思います。


「なぜ?」は無意味

 ADHDやアスペルガー症候群は、思考や感情をつかさどる前頭葉を中心とした脳機能の障害が原因と考えられています。しかし、これまでの診療経験から、頭頂葉に関連する機能の空間認識能力にやや難があることが多いと私個人は感じています。
 このため、例えば周囲の人と共に何か立体的なものを組み立てる時に間違ったり、一緒にどこかに向かおうとしている時に道を間違えたりすることが起こります。本人の認知上はそれが正しいと思った結果起きることなので、この時に「なぜ?」と問うのは意味がありません。また、とりわけADHDの人は注意が欠けているために、物忘れが頻繁に起こりがちですが、これは「なぜ忘れたの?」と問い詰めるのも適切ではありません。
 静かにしなければならないところで盛んに人に話しかけたり、動き回ったりしてしまう人もいます。このような時は、なぜそれが他者の迷惑になるのかを冷静に説明することが肝要です。


改善を求める時は1点集中

 ADHDやアスペルガー症候群の人は複数の作業を一度に行うことが極めて苦手です。改善してもらいたいことがいくつもある場合は、まず最も優先順位が高いと思われるもの一つのみに絞って指摘しましょう。改善されるまでに時間はかかりますが、一旦改善されると、周囲が驚くほどルーティンワークのように定着することはよくあります。そうなったら、改善してもらいたいことの中で次に優先順位の高いものを指摘すればよいのです。


目に見えない「脳の機能障害」を理解して

 ADHDやアスペルガー症候群の人に対して、とりわけきっちりとした行動を常に実践している人は「どうして……」と思うことがいくつもあるかもしれません。でも、周囲が見ても分かる、生まれつき歩行困難な人に、あなたは「走れないの?」と言いますか? 目には見えないだけで、ADHDやアスペルガー症候群の人は先天的な脳の機能障害を抱えているのです。このことを私は改めて強調しておきたいと思います。【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】


工藤千秋
くどうちあき脳神経外科クリニック院長
くどう・ちあき 1958年長野県下諏訪町生まれ。英国バーミンガム大学、労働福祉事業団東京労災病院脳神経外科、鹿児島市立病院脳疾患救命救急センターなどで脳神経外科を学ぶ。89年、東京労災病院脳神経外科に勤務。同科副部長を務める。01年、東京都大田区に「くどうちあき脳神経外科クリニック」を開院。脳神経外科専門医であるとともに、認知症、高次脳機能障害、パーキンソン病、痛みの治療に情熱を傾け、心に迫る医療を施すことを信条とする。 漢方薬処方にも精通し、日本アロマセラピー学会認定医でもある。著書に「エビデンスに基づく認知症 補完療法へのアプローチ」(ぱーそん書房)、「サプリが命を躍動させるとき あきらめない!その頭痛とかくれ貧血」(文芸社)など。


元の記事を読む



↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
健康であるうちに読んで頂きたい記事は、こちら







関連記事

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

レザレクト

Author:レザレクト
復活comへようこそ!

プロフィール詳細
ブログ復活comの概略

スポンサーリンク

ブログランキングに参加しています。
1クリックにご協力をお願いいたします。


ビットコイン取引高日本一の仮想通貨取引所 coincheck bitcoin 仮想通貨の概要を読む