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京大ナンバーワン教官が教える「勉強することのホントの意味」

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(Yahoo!ニュース「現代ビジネス」・12/02)

 推古元年(西暦593年)4月、聖徳太子は現在の大阪・四天王寺に、仏法修行の場として「敬田院」を開設した。

 この日本で初めてつくられた公教育施設である敬田院の精神を受けつぎ、社会に貢献する女性の育成に力を入れているのが、学校法人四天王寺学園が運営する四天王寺中学・高校である。

 2017年11月6日、その四天王寺中学の女子中学生約500名に、「なぜ勉強するのか」と題した講演が行われた。

 演台に立ったのは、京都大学ナンバーワン人気教官の瀧本哲史氏。同氏は『ミライの授業』『武器としての決断思考』などのベストセラー作家としても知られている。

 「ミライ」を生き抜いていかねばならない彼女たちに、瀧本氏は何を語り、どんなメッセージを贈ったのか。

どうして勉強しないとダメなのか
 「どうして勉強しなければならないのか? 強しなければならない理由とはなにか? 

 今を生きる多くの大人も、かつては抱いたであろうこの疑問。大阪市内の伝統ある女子名門校として知られる四天王寺中学だが、その講堂に集まった約500人の女子中学生たちも、日々感じているに違いない。瀧本氏はその答えを解き明かすために、「まず最初に、いま世の中で起きている大きな変化について、説明したいと思います」と講義を始めた。

 「みなさん、資本主義って言葉、聞いたことあるでしょう。資本主義というのは、一言でいえば『好きなものを、誰でも自由にお金で買える社会』のことです。日本やアメリカをはじめ、いま世界のほとんどの国がこのシステムを採用しています。それに対して『社会主義』というシステムもあります。

 社会主義の国では、どこかにいる偉い官僚や政治家が『みんなはこれを買いなさい』と決める仕組みで社会を運営しようとしました。しかし、これはほとんどの国でうまくいきませんでした」

 資本主義の社会では、何かを作るのが得意な人が、自分の好きなものを作り、それを自由に売ることでお金が儲けられる。

 そのことによって企業や人々の間で健全な競争が起こり、世の中が便利に進歩していくというシステムだ。しかし近年、この資本主義システムが世界中で急速に進行したことによって、「あらゆる人が世界中から一番良いものを一番安く買えるようになり、そのことが日本経済の低迷をもたらした」と瀧本氏は語る。

 「iPhoneを作っているアップルは、どこの国のメーカーだかわかりますか? ステージ上から中学生たちに問いかけると「アメリカ!」とあちこちから声が上がった。

 「そうです。でもじつはiPhoneの中の部品は、ほとんどが日本や台湾、韓国製です。スマホの組み立て自体も中国や台湾で行っていますから、『どこの国で作っている』と一言では言えないんですね。

 スマホを持っている日本人のうち、今は半分ぐらいの人がiPhoneを使っています。富士通やNECなどの日本メーカーもスマホを作っていますが、シェアはiPhoneに比べれば非常に小さい。

 昔はメイド・イン・ジャパンが『世界最高品質』の証明でしたが、今やそんなブランドイメージはゼロになってしまったんです」

 資本主義が進んだ結果、現在の世界は、iPhoneのようなそれまでにない、まったく新しくて画期的な製品を最初に作りあげた企業だけが、儲けを独占する構造となっている。かつて世界の市場を制した多くの日本企業が、この10年で苦境にあえぐようになったのも、彼らが作る製品が「世界一」ではなくなったからだ。

 資本主義の進歩と歩調を合わせ、社会に巨大な変化を起こしているのが、「テクノロジーの進歩」だ。人々の働き方にも巨大な変化をもたらしているその実例として、瀧本氏はスクリーンに二人の男性の写真を投影した。

 「この人たちは何をしているんでしょうか? 
「駅員さん」「キップを切ってます」

 片方の写真の駅員は、何十枚も並んだキップを前にして座っている。昔は駅に自動販売機が無かったので、乗客の行き先を聞いて、その値段のキップを駅員が手売りしていたのだ。

 「それが今はどの駅もこうなっていますよね」と、瀧本氏は自動改札の写真を次に投影する。

 「駅員さんだけではありません。最近AIの進化にともない、あらゆる仕事がどんどんコンピュータ化されています。皆さんが大人になる頃には、『答えが決まっている仕事』のほとんどは、コンピュータや人工知能を搭載したロボットが行うようになることが確実です」

 そうした未来に生きていく子どもたちは、どのような力を身につければ良いのだろうか。


ハリー・ポッターと「君たちの将来」

 瀧本氏が次に映し出した写真に、場内から歓声が上がった。「ハリー・ポッターだ!」。投影されたのは、映画『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物、ハリーやハーマイオニーたち魔法学校の生徒が横並びに立つ写真である。

 「そうだね、皆さん、毎日勉強していて『なぜこんな何の役にも立ちそうにない、三角関数とか平行線の証明とかをやらなきゃならないんだろう』と思いませんか? 

 無言でうなずく生徒たち。

 「でも実は、皆さんが今学校で習っているのも、ハリーたちと同じ『魔法』なんです」

 瀧本氏がそう言うと、生徒たちは「どういうこと? と言いたげに、ぐっと席から体を乗り出して耳を傾けた。

 「現代の魔法というのは、科学と技術です。過去の偉人たちが発見した偉大な真理や発明が、いまの私たちの生活を支えています。例えば飛行機。150トン以上もある鉄の塊が、日本とアメリカの間の空を飛んでいくなんて、江戸時代の人が見たら『魔法だ! 』とびっくりしますよね。そうした技術を支えている根本は、皆さんの多くの人が嫌いな『数学』なんです」

 もしも人類が三角関数を発明していなければ、飛行機を飛ばすことも船を運行することもできない。電車のモーターや車のエンジンを作ることも不可能だ。現代社会の「魔法」はここ20年でさらにスピードを上げて進化し続けている。

 「今から34年前に描かれた漫画のドラえもんに、『おこのみボックス』というひみつ道具が出てきます。小さな箱に『テレビになあれ』というとテレビになって、レコードで音楽を聞くことも、カメラにもなる。

 それってつまり、皆さんが持ってるスマホですよね。スマホはさらに、ゲームもできれば電話やLINEで友だちと連絡を取り合ったりもできます。わずか30数年前の『夢の道具』が、それ以上の性能で、現実になっているんです」

 医学の進歩でいえば、これから人間の平均寿命は100年を超える時代になるとも言われている。米国の起業家イーロン・マスクが経営するスペースX社は、人類を火星に送り込むことを真剣に目指してロケットを開発している。

 今日の瀧本氏の講義を聞く彼女たちが大人になる頃には、道路を走る車の多くはAIにより自動運転になっている可能性が高い。20年前に今のスマホの隆盛を予見できた人は誰もいなかった。テクノロジーの進歩がもたらす未来は、現在を生きる我々の想像力をきっと超えるだろう。

 「そうした技術の元になっているものこそ、今、皆さんが学校で習っている数学や自然科学です。つまり今、皆さんは学校で、『魔法の元』を習っているんです」

 瀧本氏は、学校で教えてくれる学問の重要性について、次のような小咄を例に解説する。

 「昔、中国の田舎に、数学がすごくできる中学生がいました。ある数学の研究者がその子の才能を見抜いて、『君は都会の学校に行って、数学の勉強をするべきだ』とアドバイスしました。しかし、その子の親は『うちで農業を手伝わせます』と進学を止めたのです。

 何年かして研究者がその子に再会すると、彼はこう言いました。『先生、僕はすごい発見をしました。この公式を使うと、あらゆる2次方程式が解けるんです』。彼が見せたのは、皆さんが中3で必ず習う『解の公式』でした」

 生徒たちがどっと笑う。「ゼロから車輪を再発明する」ようなことは、時間の無駄でしかない。すでに解明されている真理や、かつての人々が見出した知見、発明された技術は、できるだけ効率的に学ぶことが、新しいものを生み出すためには必要なのだ。


ナイチンゲールが偉大なワケ

 「この人の顔は、きっと見たことがあると思います」

 そう言って瀧本氏が映し出したのは、今から200年近く前のイギリスで、当時の世間の「常識」と戦い、医療の進歩に多大な影響を与えた女性、フロレーンス・ナイチンゲール(1820~1910)である。

 「ナイチンゲールという人は、何をした人? 
「看護をした人」
「そう、みんなそう思いますよね。でもそれはナイチンゲールの偉大な功績の、実は半分でしかありません。意外なことにナイチンゲールは、皆さんの多くが好きではない、数学の専門家だったんです」

 看護と数学? いったいどういう関係があるのだろう、と生徒たちの顔にとまどいの表情が浮かぶ。

 「兵士が戦争で死ぬのは、鉄砲で撃たれたことが理由だと思うでしょう。でも実際には、その30倍もの兵士が『きちんと看病されないこと』で死んでいたんです。ナイチンゲールはロシアとオスマン帝国の間で起きたクリミア戦争に派遣されたとき、重症を負ったわけではないのに、死ぬ兵士があまりにも多いことに気づきました。

 床や壁は腐り、ゴキブリが這い回って悪臭が立ち込める戦地の病院には、医療物資や薬品も足りなかった。その不衛生な環境で、抵抗力の弱った兵士たちは感染症にかかって、ばたばたと死んでいたのです。

 ナイチンゲールがすごいのは、そのことに気づいた後で、兵士たちを看護するだけでなく、彼らの死因をきちんとした統計データにとり、一目でわかるグラフにしたことにあります」

 その当時は、棒グラフも円グラフも普及していない。ナイチンゲールは独自に「コウモリの翼」と呼ばれる円グラフを作り、兵士たちの死因の統計を1000ページ近くにもなる報告書にまとめ、イギリス女王が直轄する委員会に突きつけたのである。

 ナイチンゲールがこの時に明らかにした、客観的なデータにもとづく医療施設の衛生環境の改善がなければ、現代の病院における死亡率も大きく変わっていたかもしれないのだ。ナイチンゲールは裕福な家庭に生まれたことから、幼少の時から最高の教育環境を与えられ、語学や文学、そして数学や統計学を学んでいた。

 彼女がやり遂げた人類史に残る大きな「仕事」は、彼女が看護師になるずっと以前に学んだ「数学」と「統計学」によって達成されたのである。

 続いて瀧本氏がナイチンゲールと比較の対象として、「残念だった人」として紹介したのが、文学者としては超一流の作品を残した森鴎外だ。当時最先端のドイツ医学を学んだ森鴎外は、明治時代に国民病と呼ばれた「脚気」の原因を、「脚気菌」という細菌が起こしている結核やコレラと同様の伝染病だと考えた。

 「しかし脚気の本当の原因は、ビタミンB1の不足であることは今では常識です。当時も、ビタミンB1を多く含む麦を食べている人は、脚気にならないことがわかっていた。しかし陸軍軍医のエリートであった森鴎外は、その事実を無視して『食事なんて関係ない』と主張し続けた。

 その結果、日清・日露戦争で何万人もの兵士が脚気が原因で命を落としました。多くの人々の役に立つ、新しいことを発見するポイントを、私たちはナイチンゲールから学ぶことができます。それは『思い込みではなく、誰もが納得するデータを集めること』なんです」


憲法ってナニ⁉

 瀧本氏が次に紹介したのは、ベアテ・シロタ・ゴードン(1923~2012)という女性だ。瀧本氏が「皆さんこの人を知っていますか? と問いかけるが、誰からも手が上がらない。しかしこの女性こそが、わずか22歳にして、男尊女卑で女性が虐げられていた終戦直後の日本社会に「男女平等」という概念をもたらした人物だ。

 「このベアテという女性はオーストリア生まれのユダヤ人で、親がピアニストでした。幼い頃から日本をふくむ世界中で暮らしたことから、日本語、フランス語、ドイツ語、英語など6ヶ国語に堪能となり、太平洋戦争の開始後その語学力を活かして、アメリカ陸軍の情報部や『タイム』という雑誌社で働きました」

 ベアテはタイム社で働いていたとき、非常に優秀でありながら女性であるという理由で、リサーチ・アシスタントとしての仕事しか与えられなかった。当時のアメリカも男女平等の国ではなかったのである。

 太平洋戦争が終わると、ベアテはGHQの職員に応募し、両親が暮らしていた「第二の故郷」である日本に帰ってきた。そして民主国家として日本が生まれ変わるための「日本国憲法」の草案づくりに携わる。

 ベアテらに与えられた草案づくりの期間は、わずか9日間。彼女は持ち前の語学力と、リサーチャー時代に培った調査力を活かし、世界の国々の憲法を読み比べて、日本国憲法に明記されることになる「男女平等」の理念の土台を作ったのである。

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日本国憲法第24条
一婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
二配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
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 「いま皆さんがこれを読むと『当たり前』と思うかもしれません。しかし戦前は、まったく当たり前ではなかったのです。まず女性には『財産権』という自分の財産を持つ権利が認められていなかった。

 日本だけでなく、当時、世界でも男女平等の国はほとんどありませんでした。イギリスで1813年に刊行されたジェーン・オースティンの『高慢と偏見』という小説は、夫がいない女性が、父親が死ぬと財産が国に没収されてしまうので、急いで良い結婚相手を見つけうようとする、という筋書きです。日本国憲法ができた1946年の時点でも、ベアテが草案を作ったこの2つの理念を憲法に明記した国家は、世界でもきわめてまれでした」

 重要なのは、「日本国憲法というのは、日本人だけで作った憲法ではない」ということだと瀧本氏は言う。

 「日本国憲法は、アメリカやドイツをはじめとする世界中の憲法の『いいとこどり』をして作った憲法なんです。ベアテは6ヶ国語ができたから、世界中の憲法を集めて読み込み、日本国憲法に活かすことができた。ベアテがもしいなければ、日本国憲法に男女平等を明記した24条が明記されることは、ほぼ無かったでしょう」

 実際、草案についての話し合いで日本政府側は、24条について『日本には男女同権の土壌はないから受け容れられません』と反対したという。だがGHQ側のリーダーが「この条文は日本で育ち、日本をよく知っている通訳のシロタさんが書いたもので、日本にとって悪いことが書かれているわけがありません。彼女のために通してもらえませんか」と主張して、残されることになったのである。


ルールを作るのはあなたたち

 「ちなみに憲法の『いいとこどり』をしたのは、ベアテだけではありません。皆さん、『憲法』という言葉を日本で最初に使ったのは誰だかわかりますか? 
 しばらく生徒たちはざわざわと話し合ったあと「……聖徳太子? という声が上がった。

 「そのとおりです! じつは聖徳太子も、憲法をゼロから自分で作ったわけではなく、よその国の憲法を『いいとこどりして』十七条憲法を作っています」

 聖徳太子の生きた時代、日本は海を隔てた中国大陸の大国・隋に脅かされていた。隋の周辺にあったアジアの国々は、隋に対する朝貢を欠かさず、日本もその例外ではなかった。

 聖徳太子は、国家として日本がきちんとした仕組みを整えなければ、いずれ隋に征服されてしまいかねないと考え、隋と同レベルの国となるために、十七条憲法や冠位十二階などの制度を整えた。瀧本氏は「それらはほとんど隋の制度や条文を『いいとこどり』したものです」と指摘する。

 「十七条憲法の中でもっとも有名な言葉、『和をもって尊しとなす』も、中国の偉大な思想家・孔子の『論語』に出てくる言葉からとっています。しかし聖徳太子のすごいところは、隋という当時の世界最大の国から、いちばん良いところを学び、その本質的な精神を自分たちのものにしたところなんです。

 ちなみに真似された隋という国のほうは、法を作ってもきちんとそれを実行しなかったため、社会も政治も乱れ、わずか30年で唐に滅ぼされてしまいます。聖徳太子は十七条憲法をもとに、その法に流れる精神をちゃんと実行した。だからこそ『和をもって尊しとなす』の精神は、今も日本に残り続いているわけです」

 瀧本氏は、四天王寺中学の礎である敬田院を作った聖徳太子について、解説を続けていく。

 「皆さん、聖徳太子って、どういうイメージですか? なんとなく昔からの伝統とかを重んじる人、という感じを抱いていませんか。それは、ぜんぜん違います」

 聖徳太子の事跡のなかでも、後の日本の歴史に多大なる影響を与えたことの筆頭といえば、仏教の国教化が挙げられるだろう。もともと仏教は、当時の日本に存在しなかった宗教だ。それまで日本は太古からの自然信仰に基づく、八百万の神を奉じる国だった。国家としての祭りや祈りも、すべて神に奉じられていたのである。

 「しかし聖徳太子は、『これからは仏教の時代だ』と宣言して、十七条憲法の中にも『三宝を敬え』と書き、各地に寺を建立して広げていったわけです。もちろんこの改革に猛反対にあいます。

 聖徳太子は、伝統の破壊者であり、創造者だった。四天王寺に学ぶ皆さんには、ぜひ聖徳太子の根本にある『他のところから良いことを学ぶ』『伝統に従うのではなく、自ら伝統を作り出す』精神を学んで欲しいと思います」

 講義のなかで、瀧本氏は、「鉄の女」と呼ばれたイギリス首相のマーガレット・サッチャーや、63歳で国連難民高等弁務官になり、多くのクルド難民を救った緒方貞子氏らの軌跡を紹介していった。

 そして最後にまとめとして、次のように語った。

 「今日の話では、22歳の女性でも国の根本を変えるような憲法が作れるし、国連でまったく働いたことがない高齢の女性でも、ルールを変えて人を救うことができることを話しました。つまり『新しいこと』は、いつも世の中の新人が始めるんです。

 昔のヨーロッパで、天動説が地動説に変わったのは『世代交代』が理由でした。天動説の信奉者は、結局死ぬまでそれを信じていた。『天動説はおかしい』と考える、新しい考え方を持つ若い人が世の中の多数派となったとき、初めて地動説が『定説』になったのです。

 皆さんは若くてどこの世界に行っても新人です。でもそれゆえに、世の中を変えられる可能性が、大人よりもずっと大きいんです」

 いつの時代も新しい発見は、常に若くて古いパラダイムに染まっていない新人によってもたらされる、と瀧本氏は力強く語った。

 「では、今日の最初の質問に戻ります。皆さんは、何のために勉強するんでしょうか? 

 誰かいるかな、と瀧本氏が広い会場を見回すと、おずおずと手を上げる一人の生徒がいた。マイクを渡された彼女は、次のように述べた。

 「……私たちは今は何者でもないけれど、未来には何にでもなれる可能性があると思います。だからこそ、今興味が持てないことでも、勉強する価値がある、ということではないでしょうか」

 答えを聞いた場内の女子中学生たちから「すごーい!」という声があがり、大きな拍手が湧き起こった。瀧本氏が今日の講義に込めた思いは、確実に彼女たちに伝わったようだ。


瀧本先生のメッセージ

 「そのとおりです。皆さんはまだ若いから、自分たちの物語を作ることができる。自分で脚本を描いて、自分が主役を演じることができる。どこにでもいる女子中学生で、何者でもないからこそ、何者にもでもなれる可能性を持っている。

 でも『何者か』になるためには、世の中のみんなが知っていることを知る必要があるし、みんなが知っていることを、違う角度から見られるようになる必要がある。そのためにも、今皆さんが取り組んでいる勉強を、がんばってください。今日の講義はこのへんで終わりです。くれぐれも、数学が大切ということは忘れないでくださいね」


 そう締めくくり、瀧本氏は壇上を去った。会場からは生徒と父兄から万雷の拍手が鳴り響いた。

 終了後、この日の瀧本氏の講義を聞いた2年生の女子二人に、感想を聞いた。Aさんは「世の中で活躍する人は男性が多いと漠然と考えていましたが、女性で世の中を変えた人がたくさんいることを知りました。将来、私は医学の道に進みたいと思いますが、コンピュータにはできないゼロからイチを生み出す仕事をしたいと思います」と語った。

 Bさんは「知識だけが必要な仕事は、やがてAIに置き換わると聞いて、そのとき求められる力は、『自分の考えを言葉にして、他の人に伝えていくことなのではないか』と感じました。今日聞いた緒方貞子さんの話のように、自分が正しいと信じる道を実現するために、今の勉強をがんばりたいと思います」と述べた。

 「ミライの授業」で瀧本氏が女子学生たちに伝えたメッセージは、きっとそう遠くない将来、この世界のさまざまな場所で、大きく花開くことだろう。

 (取材・文/大越裕)

現代ビジネス編集部

引用元 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171202-00053586-gendaibiz-bus_all&p=1



とても素晴らしい講義だったと思います。

本も思い出しました。

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