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大人の発達障害、「ミスが多い」「もの忘れが多い」人はADHDかも?

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(Yahoo!ニュース「DIAMONDonline」・11/11)

 「同じミスを繰り返す」「締め切りが守れない」「もの忘れが多い」――。会社で上司に指摘されて悩んでいる方、もしかすると注意欠如・多動性障害(ADHD)が原因かもしれません。「大人の発達障害」をテーマに、前編ではその定義とアスペルガー症候群を中心とした「自閉症スペクトラム障害(ASD) 」について紹介しました。後編では、大人の発達障害としてASDと並び問題となるADHDについて、昭和大学附属烏山病院でADHD専門外来を担当する岩波明先生に解説してもらいました。

● 日本に300万人以上 ASDよりポピュラーなADHD

 発達障害は、生まれつき脳機能に何らかの偏りがあるために起こる障害です。特定の疾患名ではなく、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「特異的学習障害(SLD)」などの総称です。以前は子ども特有の障害で大人になれば治癒すると考えられてきましたが、1990年以降、軽度であっても症状が持続することが明らかになりました。

 発達障害が軽症だったり、標準以上の知能があったりする場合、学生時代までは、本人の努力や周りの配慮によりその症状をカバーできることが少なくありません。ところが社会人になって職場の業務や人間関係などで行き詰まり、精神科を受診して初めて発達障害と診断される――。このようなケースが近年話題となっている「大人の発達障害」です。

 成人期の発達障害がクローズアップされるようになったのは、景気悪化により従業員一人ひとりに対する要求や、コンプライアンス(規則の順守)重視の傾向が高まり、「枠からはみ出す」従業員の行動が許されなくなってきた90年代後半ごろだと考えられます。

 現在、大人の発達障害として問題になっているのは、ASDとADHDです。さまざまな報告はありますが、ASDに比べてADHDの有病率は高く、小児期は4~8%とADSのほぼ5倍以上。また、成人期の有病率は約3~5%で、ADHDの特性を持つ人を含めるとその倍以上になると考えられ、日本にはADHDの人が少なくとも300万人以上いると推測されます。これは精神疾患の中で、最も多いものの一つになります。

● 大人のADHDで問題となる注意力・集中力の欠如

 多動や衝動性、不注意などADHDの症状が発現するのは3~4歳ごろからです。不注意が目立つ人(不注意優勢型)、多動性・衝動性が目立つ人(多動-衝動優勢型)など、症状は人それぞれ異なり、年代や状況によっても変化します。

 児童期にADHDと診断を受ける子どもの多くは、「席に座っていられない」「他の生徒に手を出す」といった多動・衝動性による問題行動が見られるケースが大部分です。思春期以降、これらの症状は改善することもありますが、逆に睡眠障害が悪化して、朝起きられず遅刻する人も出てきます。「提出物を出すのを忘れる」「勉強に集中できない」という学業上の問題が生じやすく、ADHDの人は中退、退学、留年などの割合が高いとの報告もあります。

 成人期になると、もじもじ体の一部を動かしたり、過度におしゃべりしたりするといった症状は残るものの行動面における多動は目立たなくなります。その半面、「雑念が多い」「不安定でイライラしやすい」といった内面の多動は継続する傾向があります。

 衝動性の主な症状としては「思ったことをすぐ口に出す」「短気で怒りやすい」などです。また、アルコール、薬物、ギャンブル、買い物への依存、過食やリストカットといった衝動的な行動も起こしやすい傾向にあります。海外ではADHDの人が離婚率や離職率が高いとの報告もあり、さらにスピード違反や交通違反など運転上の問題が多いとのデータもあります。

 成人期のADHDで多くの人にとって顕著かつ問題となるのが、注意・集中力の障害です。注意を持続さたり、同時に複数の行動に注意を払ったり、注意を切り替えたりすることが苦手で、集中力も散漫です。「片付けが苦手」「約束を守れない」「置き忘れが多い」といった症状が見られ、職場では「スケジュール管理が苦手」「段取りがヘタで、問題を先延ばしする」「仕事が遅い」「ケアレスミスが多い」などマイナスの評価を受けやすくなります。

 また、ADHD特有の症状は対人関係にも影を落とすこともあります。ADHD の人は元来人なつっこいのが特徴ですが、一方的な発言や約束を忘れるなどのミスを重ねて、安定した関係を続けられないことがしばしばです。


● 多くの人が症状を自覚して受診

 現在、昭和大学附属烏山病院で15歳以上を対象に行っているADHD専門外来を訪れる人の多くが就労しています。軽症で知的能力が高く、年齢は20~30代が中心です。性別では男性が若干多めです。ADHDの人の割合は小児期に3~5:1で男性が高いのですが、女性は不注意優勢型で大人になって発覚するケースが多いため、性差は少ないと思われます。

 職場でのプレッシャーやストレスによりADHDの症状が目立つようになり、「他の人と比べてミスが多く、どこかおかしい点がある」と自分の症状を自覚して来院される方がほとんどです。「学歴があるのに使いものにならないから、発達障害に違いない」と会社の上司や産業医に言われて来院する人もいます。

 ADHD発症のメカニズムは解明されていませんが、生まれながら脳の一部の働きや、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの働きが不十分であることが原因と考えられています。同一家系にADHDやASDの出現率が高いことからも遺伝的な要因もあるとされています。

 ADHDが疑われ、その症状がストレスや生きづらさの原因となっている場合、精神科や心療内科を受診しましょう。ただ、日本ではまだ発達障害の診療体制が整っておらず、大人のADHDを診察できる病院は限られています。発達障害支援センター(※)
などで情報を集め、事前に病院に電話して確認するのがよいでしょう。 診断では問診を重視します。児童期かそれ以前にADHDの症状が認められたか、その症状が現在まで継続しているかがポイントとなります。通知表に「落ち着きがない」「忘れ物が多い」などのコメントがあれば、判断材料の一つになります。補助的なツールとして、コナーズ成人ADHD評価スケール(CAARS)、他にも成人期の自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)、ヴェンダー・ユタ評価尺度(WURS)などを使用します。


● 併存の多い「うつ病」「社会不安障害」「アルコール依存症」

 ADHDの人は精神疾患を併存しているケースが多く見られます。ADHD特有の症状より失敗を繰り返してうつ状態に陥り、精神科や心療内科を受診する人は少なくありません。

 米国における調査では、社交不安障害などの不安障害が47.1%、うつ病、双極性障害などの気分障害が38.3%、アルコール依存などの物質使用障害が15.2%などと併存率が高いことが明らかになっています。うつ病と診断された人の背景にADHDがあるケースも多々あります。ADHDが原因で精神疾患を発症している場合、うつ病の治療に加えてADHDの治療が必要となることが多く見られます。

 他の発達障害との併存もあります。ASDは「空気が読めない」「コミュニケーションが苦手」「こだわりが強い」などが特徴とされ、これまでは全く異なる疾患と考えられていましたが、ASDとADHDには類似点が数多く見られます。先天的にASDとADHD、2つの特性を持つ人もおり、ADHDの人がASDと誤診されるケースも珍しくありません。

● 治療の第一歩は特性を知ること

 ADHD治療の柱は、薬物治療と心理社会的治療です。残念ながら完治は望めません。どのような問題を抱えているかを把握した上で治療方針を決め、症状だけでなく、生活上の困難を改善し、本来の能力を十分発揮できる状態を目指します。

 薬物治療では、衝動性や多動を抑え、注意力や集中力を高める効果が期待できます。メチルフェニデート徐放剤(商品名:コンサータ)は即効性があり、朝服用すると短時間で効果が現れ、12時間あまり持続します。副作用は、頭痛、食欲不振、動悸、不眠などです。この薬剤は乱用や依存が問題となったリタリンを改良した中核神経刺激薬ですが、医師の指示を守って服用すれば問題はありません。アトモキセチン(商品名:ストラテラ)は服用後、効果が現れるまでに3~4週間かかりますが、その後は効果が24時間持続します。重大な副作用はありません。この2剤の有効性は同程度で、約8割の人に効果が現れます。

 心理社会的治療は、社会生活のサポートが目的です。ADHDの人はさまざまな問題を、自分なりの知恵と努力で乗り切っていますが、うまく対処できていない状況も多々あります。そこで、コミニュケーションスキル、自己マネジメントスキルなどの対処方法を身につけていきます。


 昭和大学付属烏山病院で行っているのは、現状を正しく判断して偏った考えや行動を修正する「認知行動療法」を利用した全12回のグループ療法です。発達障害についての心理教育に加えて、忘れ物対策や感情コントロールなどテーマを決め、これまでどのような問題が起き、どう工夫をしたかをディスカッションします。同じ悩みを抱えている当事者同士で話し合うことで、自己理解が深まりやすいようです。この治療の参加者には、主症状である不注意や衝動性だけでなく、不安などの精神状態も改善するなどの効果が認められています。

 治療を進める上で重要なのが、自分自身の特性を理解して受け入れ、変化のために立ち向かう気持ちを持つことです。「だらしない」「いいかげん」と言われ続け、自己肯定感が低くなっている人が「自分が至らないのは、性格のせいではない」と知るだけで、ストレスが軽減し、精神状態も安定するようです。

 ADHDを「疾患」と定義するのは必ずしも適切ではありません。生まれつきの個性とも言うべき面も大きく、症状をコントロールできるのであれば、治療を必要としないためです。そこが他の精神疾患とは違います。

 また、創造性豊かで独自の視点や発想力にあふれ、興味ある分野においては集中力を発揮するなどの強みがある。物づくり、研究職、編集職など、自分の関心が高い分野で能力を発揮できる人も少なからず見られています。

 周りの目を気にせず、ためらわず決断して突き進み、沈滞した閉塞状況を打破して新しい活路を切り開く。その能力をADHDの人は持っているのです。

 ※日本自閉症協会のウェブサイトに一覧が掲載されています。
http://www.autism.or.jp/relation05/siencenter.htm

引用元
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171111-00148669-diamond-soci&p=1


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