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福祉事業者が障害者の可能性を限定している現状を知ってほしい~日本財団 竹村利道インタビュー~

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(livedoorニュース「BLOGOS・10/25)


政府が「一億総活躍社会」「生産性革命」といったスローガン掲げる一方で、労働人口は減り続け、社会保障費は膨らみ続けている。その中でも、障害者福祉の領域は「聖域」とされ、必要以上の税金が投入されていると指摘するのは、日本財団で障害者の就労支援を手がけるプロジェクト、「はたらくNIPPON!計画」の指揮を執る、竹村利道氏だ。

自身も高知県で障害者が就労するカフェなどの事業を行うNPO法人「ワークスみらい高知」を運営してきた経験をもつ竹村氏に、現状の障害者福祉、特に就労支援を行う上での問題点について話を聞いた(聞き手:北条かや)。


「良かったね」だけでは伝わらない障害者就労の問題点

北条(以下、北):私が竹村さんと初めてお会いしたのは、今年5月、原宿に障害者が働くフラワーショップ&カフェ『ローランズ social flower & smoothie shop』がオープンした際に取材へ伺ったのがきっかけです。ローランズは、日本財団の「はたらくNIPPON!計画」プロジェクトのひとつですね。そのときに竹村さんから、私が2012年に取材したアール・ブリュットの記事を読んで頂いたと聞いて、話が盛り上がりました。

竹村さん(以下、竹):障害者に対する取材記事って、「よく分からないけど、何となく良いことをしているんだろう」という結論にされがちなんです。それに対して北条さんは、障害者が描く作品への違和感も率直に書かれていて、印象に残りました。

北:ありがとうございます。もう5年前になりますが、障害者を含む多様な人たちの作品展を取材したレポートでした。

竹:あの記事をきっかけに、「こういう伝え方もあるのかもしれない」と思ったんですよね。

ただ「(障害者の実態を)良かったね」と報道するだけでは、伝わらないことがある。

「障害者就労」というマイナーなテーマも、関係者の僕たちが伝えるより、北条さんのような人が「外」の視点から取材した方が、「なぜこんなことに多額の税金が使われているの?」などの疑問がたくさん出てくるのではないかと思いました。


障害者の工賃は、月額わずか15033円

北:竹村さんは、日頃から既存の障害者就労支援のあり方の問題点を指摘しています。日本財団の笹川会長も20年以上、障害者就労に資金を投入していますが、成果がなかなかでないとおっしゃっています。

竹:現在、障害者の工賃(※)は、月額15033円です。こうした工賃で働く人が日本全国に30万人いる。30万人に月額1万5000円払うために、障害者を雇う福祉事業者は、その約10倍の予算を元手にしている。つまり、事業者側が、補助金を「飯の種」にしているいびつな構造なんです。

※注:「工賃」を支給するのは障害者総合支援法に基づく就労継続支援B型・就労移行支援が該当する。これらは雇用契約を結ばない形態のため、「賃金」ではなく「工賃」と言われる

北:竹村さんは長年、障害者就労に関わってこられて、多くの事業所を見ているわけですよね。

竹:僕は当初、公共機関で障害者就労に携わっていたんです。25年ほど前の衝撃を未だに覚えていますよ。福祉施設に入所した障害者が、テッシュの袋詰や割り箸の袋詰をしている。いくらもらえるかというと、1日500円くらい。

北:朝から夕方まで働いて、1日500円……?

竹:さらに福祉事業所は、必要もないのに障害者を自宅まで送迎に行くんですよ。送迎すると国の予算補助が受けられるから。朝9時から送迎が始まって、車で事業所に連れてくる。帰りも送迎があって、実働は5時間くらい。それで1ヶ月に20日通って、1万円もらうというのが、僕が最初に勤めた福祉事業所でした。

北:必要のない送迎にも、税金が使われているんですね。一見すると障害者が優遇されているように見えるけれども、工賃は異様に安い。税金の使い所が間違っているようにも感じます。

竹:当時の同期は皆、「僕らは(当時の年収で)450万円くらいもらっているのに、障害者は月額1万5000円しかもらえない」って、その格差に違和感をもっていました。でも半年くらい経つと、「仕方ないよね、障害者は仕事ができないんだから」と慣れてしまう。国は、福祉事業所を支援する予算は潤沢に用意しながら、障害者は低工賃のままで、何の能力向上もさせない。もう40年、こんなひずみが続いている。

年間3000~4000億円が「ムダ」に?

北:そうした実態は、ほとんど知られていないように思います。

竹:年間30万人の障害者に、月額1万5000円を支給するために、約3000~4000億円の税金が使われているんです。それでもまだ障害者は自立できず、生活保護を受けるケースもある。そうすると、また税金が使われることになります。

また、25年前、この国の障害者の平均工賃が1万1000円でした。今は1万5000円ですから、四半世紀で4000円しか上がっていないんです。

北:なぜ、そこまで賃金が上がらないのか、率直に疑問なのですが。

竹:取材すると、事業者はおそらく「みんな障害が重度だから、働けないんですよ」と返してくると思いますよ。でも、たとえば、さっきここへお茶を給仕してくれた彼女(※注:日本財団ビルの喫茶店で働いている女性)は知的障害を持っていますが、少なくとも東京都の法定最低賃金はもらっています。そういう女性でも、ひとたび福祉事業所へ行ってしまうと「重度だから働けない」とされ、1日500円しか得られない。

北:5月にオープンした原宿のカフェ「ローランズ」でも、障害者が普通に働いていましたよね。もちろん「普通」とは何かという問題は残りますが、少なくとも1日500円しかもらえない働き方ではなかった。

竹:ローランズでは、精神障害者が多く働いていますが、1人あたり月額13万円を支払う計画です。

北:それが障害者雇用の現場で「新しい」となるのがそもそも驚きです。

福祉事業所にいる障害者の8割は「もっとできる」はず

北:月額1万5000円で働いている30万人の中には、やり方さえ工夫すれば、福祉事業所ではなく一般的な事業所で働ける人たちもいるわけですよね。竹村さんの体感では、どのくらいいるんでしょうか。

竹:福祉事業所で働く障害者のうち、3割は「明日にでも一般企業で就職できるんじゃないか」という人たちです。残りの人のうち3割は、手前味噌ですが、僕が高知県でやっている事業所にきてくれたら、明日からでも最低賃金を払いますよという人たちだと思います。

北:そんなに働ける障害者がいるんですね

竹:あとの2割くらいは、福祉事業所にしかいられないかもしれないけれど、もう少し工夫すれば、月額4万円くらいまで工賃をあげられるんではないかという人たちです。最近、日本財団の「はたらくNIPPON!計画」プロジェクトで作った熊本のラーメン屋さんは、そういったことを目指しています。そして残りの2割が、本当に障害が重く、高い工賃は出せないかもしれないけど、働きに来る、働けるということの支援のため福祉が発揮されるべき対象の人たちというイメージでしょうか。

北:つまり、福祉事業所で働くこともできず、そこにしか居場所がないという障害者は全体の2割しかおらず、8割は能力があるにもかかわらず、本来の能力が発揮できないままになっているわけですよね。しかも、そのような状態が40年も続いている。そうした状況を前提としつつ、日本財団も、この10年で2000件以上の福祉事業所に支援をしてきたわけですね。

竹:集計の仕方によっても変わるのですが、これまでに約2000件を対象として支援をしてきました。でも、笹川会長いわく「砂漠に水を巻くようなものだった、多くが失敗だった」と。

北:それが驚きなんですよ。竹村さんが運営している高知の事業所のように、利益を上げられるところまで成長したケースはほとんどないのですか?

竹:そうです。会長に直接聞いてもらってもいいくらいです。既存の障害者就労が、なぜ彼らの能力を発揮できない状況のままにしているのか。全国の事業所へ行くと違和感がたくさんあると思います。

僕が運営していた高知の事業所で働く従業員が、「竹村さん、もらう10万円と稼ぐ10万円は違いますね」と胸を張り始めたときは嬉しかったですよ。自分で稼げるようになると、モチベーションが上がって、「どうして自分は最低賃金しかもらえないんだ」と、別の仕事先を探してきて退職していくこともあります。そうやって自立へと導いていくための社会保障は必要です。

しかし、現状では障害者が、「3万円以上稼ぐと生活保護が止まるから、働きたくない」と言うケースもある。

北:障害者のお子さんがいる世帯では、経済的に自立できない上に、介護しなくてはいけないため、親御さんまで逼迫する可能性がありますね。

竹:そうなんです。「障害者の介護のため」などの理由で、世帯ごと生活保護を受けるケースも非常に多い。でも、障害者が経済的に自立すれば、お母さんはパートに出る、お父さんもちゃんと働くようになる、という感じで、生活保護から抜け出すことができるのです。

北:1人の障害者には2~3人の家族がいますから、自立すればそれぞれが納税者に変わるわけですね。

竹:そういう良いスパイラルにもって行きたいなと、僕は常々思うんですよね。

北:ただ、メディアの関心を集めやすいのは、いわゆる障害者の「いい話」ですよね。「障害者福祉は『聖域』だ」などという批判は言いづらい部分があると思います。

竹:それでも社会保障費の偏在を正すべきだと私は思うんです。もちろん重篤な障害者に対しては、しっかりと生活できるように税金を投入すべきです。だからこそ、本当に必要な人たちへしっかりお金を届けるためには、現状の「自立できる人までダメにしてしまっている」仕組みのままではいけない。


地方に偏在する障害者施設は「迷惑施設」なのか

北:そうした障害者の実態が知られていない理由のひとつに、彼らのいる施設や作業所が、地方や郊外のエリアに偏っている実態も背景にあると思います。東京では施設の多くが多摩地区にあるとか。

竹:基本的に「迷惑施設」だと思われているんですよ。僕が運営している高知の施設は、今でこそ「街の活性化に役立っている」ということで、中心市街から誘致されるようになりましたが、30年前は違いました。障害者が働く「授産施設」を作るか否かで、町内会が分裂してしまいました。似たような話が、まだまだ都市部でもある。

北:誰が、どう反対するんですか。

竹:今度、千葉県で、障害者が胡蝶蘭を作る事業所ができるんですが、最初は地元住民から、「障害者が通るんだったらこの私道は使わせない」と言われましたね。障害者に会ったこともないのに、「何をしでかすか分からない」し、「土地の価値が下がったらどうするんだ」と。

北:そうした事実は、伝えようと思っても生々しすぎる部分があるんですよね。

竹:僕は、その千葉県の事業者に言ったんです。世間のイメージでは、障害者施設というのは、「だらしない格好で、髪の毛も整えないような人がうろうろして、バザーをしている場所」といったものだと。そんな施設が建つんだったら、僕だって反対しますよ。

つまり、ちゃんとした姿を見せられない事業所側にも問題があるのです。だから、僕は反対する世間だけが悪いとは思っていません。事業者側が、そういうイメージを変える努力をしていかなければいけない。

北:まだまだそうした努力が足りない事業所が多いのでしょうか。

竹:先日、「はたらくNIPPON!計画」プロジェクトで長崎の障害者就労施設へ行ってきたんですが、そこでは「誰が買うの、この手芸品」みたいな物を作っているんです。

北:利用価値というより、障害者が作ったという「憐れの価格」が上乗せされて売られていると。

竹:その施設は、かなり厳しく研修しました。「間違っても今日、僕にお土産として手芸品を持たさないで下さいよ」と言ったくらいです。

厳しいけれども、その事実を認めないといつまでも変わらないんです。現実には、デザインセンスのない巾着とかペンケースとか、「一体、誰が使うの?」みたいな物を作っても、職員は補助金があるから飯を食えるわけですよ。

北:だから改善しない。誰かが指摘しないと変わりませんよね。

身近な人が、障害者に「もっとやれるよ」と伝えれば伸びる

竹:障害者って、実はあんまり自分の可能性を信じていないんです。いちばん身近な人が「もっとやれる」って可能性を伝えてあげれば伸びるんですが、その重要な人たちが、巾着しか作れないとか、缶潰ししかできないなどと思っていたら、障害者の能力はずっと低いままです。その意味で、僕は「生まれ方ではなくて育ち方だ」と思っている。

北:マネジメントの問題ですね。身近な親や事業者が、障害者の可能性をつぶしている。

竹:多くの障害者は、自己肯定感が育たないように教育されているんですよ。周りの人が、「やればできるよ」と言わないとダメなんです。「あなたは缶潰しとか箱作りみたいな、軽作業だけやっていればいいよ」と言うと、障害者は真面目に、ずっとそれだけやってしまう。でも、「あなたはこんなこともできるよね」と仕事を広げていくうちに、彼らだって「もっと働きたい」と思うようになる。そういう意味では、一番の問題は事業者にあるわけです。

北:わたしが最初に、障害者の事業所で作られた商品を見たのは、高校1年のときでした。学園祭で、近くの施設で作られたクッキーが売られていて。みんな一応は買うんですが、モノ自体の魅力で買うというよりは「募金感覚」なんです。しかも、「これを買ってあげている自分は良いことをしているぞ」って、謎の「上から目線」になっている。思えば小学生の頃は、クラスに知的障害の友人がいて、ほぼ同じように教育を受ける身近な存在だったのに、年齢が上がるにつれ、どんどん格差が開いていった。そのうち、彼らが作ったクッキーを、上から目線で買うようになって。今まではその「上から目線になってしまう原因」を、社会の差別心のような大きな問題として捉えていましたが、障害者を育てる人たちの意識に問題があったんですね。

竹:そうです。親も含めて、いちばん身近な人が「世間のご迷惑にならないように」と、態度を小さくさせている。福祉事業者も、障害者の能力を小さくとどめるような仕事しかさせない。その態度をやめて、障害者に対しても「やってみよう、やればできるよ」と、能動的な関わり方をすれば激変するんです。障害者が能力を伸ばせば、結果的に社会保障のムダをただすことにもなりますし、働き手の減少も食い止められる。

北:障害者に一律の軽作業をさせるよりは、消費者目線で売れる物を作って、能力を伸ばしてもらった方が社会全体の利益になる。事業者も、高付加価値の商品を作ったほうが儲かるわけですし。

竹:事業者もその方が、楽しいはずなんですけどね。

福祉事業者も「自信がない」

北:今日お話を伺うまで、障害者が働くことの難しさには、「社会の原理的な差別心とか哀れみ」が関係しているんじゃないかって、変に大きく考えすぎていた気がします。でも実際は、障害者を「憐れの蓑」で包み、能力を低くとどめおく事業者が1番の問題だということですよね。そうした事業者を1つ1つ、変えていくことによって状況は好転する可能性があると。

竹:僕らも実際に関わってみて分かったことですが、事業者の側も、はじめは自信がないケースが多いんです。「障害者がこんなことできるわけがない」と思っている。でも、上手くいけば「もっと高度なことができるんじゃないか」と、事業者自身も自立し始めるんです。そういう良いスパイラルを生むような取り組みを丁寧にやるのが「はたらくNIPPON!計画」プロジェクトなんですよ。

北:事業者たちの意識を変えることも必要ですが、制度の問題もありますよね。障害者に軽作業をさせるだけの事業者を、多額の補助金で甘やかすような現行制度が変わらないと。

竹:そうです。制度のひずみ、効率の悪い福祉にこれだけ税金が使われているということに、もっと我々が関心を寄せていく必要があります。「君たち、どうしてそんな無駄遣いをしてるんだ?」という、良い意味でのプレッシャーがあると、事業者側も、誰も買わないようなクッキーや手芸品を作っているままではダメだ、となる。多くの人に現状を知ってもらい、プレッシャーをかけてもらいたいと思います。

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