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異業種参入が相次ぐ「認知症予防」ビジネス、学習塾やスポーツクラブにIT企業も

ハス
写真は、ハス。花言葉「清らかな心」「神聖」「離れゆく愛」「雄弁」

(Yahoo!ニュース「ビジネス+IT」・09/18)

 9月18日は「敬老の日」。老後の生活設計にとって大きな脅威になるのが「認知症」である。将来は認知症になる高齢者が1000万人を超えると推計される中、「認知症予防」は介護予防の一分野を超えて国民的な関心事と言っていいだろう。予防は「脳トレ」にとどまらず、食生活、日常の運動から人間関係づくりに至るまで、生活習慣全体の改善が必要になる。政府も重要視する中、大きなビジネスチャンスとみて生命保険、学習塾、IT、スポーツクラブ、旅行業など、さまざまな異業種が認知症予防ビジネスに参入している。


●2060年、日本の総人口の1割以上が認知症

 古くは有吉佐和子氏の45年前の小説「恍惚の人」、最近ではレーガン元アメリカ大統領やサッチャー元英国首相のような有名政治家が引退後の晩年にわずらって、広く知られるようになったのが「認知症」だ。アルツハイマー性認知症、脳血管性認知症、アルコール性認知症などの種類があるが、高齢者になれば誰でも認知症になるリスクがある。

 なってしまうと、孫にものを教えたり、家族や隣人と世間話をするような「知的活動」が次第にできなくなり、身の回りのことも自分でできなくなっていく。生活に不便をきたし、介護保険のお世話になる。家族には大きな負担をかけ、「はつらつと過ごしたい」「こんなことをやりたい」と思っていた老後の生活設計は、崩れてしまう。

 21世紀後半の2060年になると、認知症患者になった高齢者が全国にあふれ、日本の人口の1割を超えるという予測がある。

 九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンターの「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、糖尿病の有病率が現在よりも上昇するのが前提条件だが、2060年の65歳以上の認知症患者は1154万人と推定されている。

 これは、2060年には9284万人と推計されている日本の全人口(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」平成29年中位推計)の12.4%で、1割を超えている。その時には高齢者のうち33.3%つまり3分の1が、認知症患者になる。


 13年後の2030年の推定値でも認知症患者数は830万人で、2012年の実績値462万人の約1.8倍に増える。高齢者の有病率は2012年の15.0%(約7人に1人の割合)から22.5%に増加し、4人に1人の割合に近づく。

 高齢化が極端に進む21世紀の日本は、世界有数の「老人大国」になるのに伴って、世界有数の「認知症大国」になっていく。認知症のお年寄りは、日常の暮らしの中でごく普通に見かけられる存在になっていくだろう。

●認知症対策、認知症予防が国の重要施策に

 その流れを、少しでも抑えたい、遅らせたいのが、福祉予算による財政圧迫を恐れる政府である。介護保険の要介護認定を受ける高齢者の数を抑えようと、健康寿命を延ばす「介護予防」の考え方が取り入れられたのは2006年の介護保険法改正だったが、介護予防の中には「認知症予防」も含まれている。

 厚生労働省は2015年1月、認知症の高齢者や若年認知症の人にもやさしい地域づくりを目指す「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定した。同じ2015年の介護保険法の改正により「介護予防・日常生活支援総合事業」がスタートし、介護予防の充実が図られている。サービスは今年4月から実施されているが、認知症予防もその中では重要な位置を占めている。

 認知症予備軍は今後も増え続けるので、認知症予防は今や、官民挙げて推進する重要なテーマになっている。ビジネスの視点で言えば、そこには拡大するマーケットがあり、ビジネスチャンスがある。高齢者のよりよき生活に貢献するという社会的な意義もある。

 健康寿命を伸ばす認知症予防は、具体的にはどんなことを行っているのだろうか? 医師などの専門家も加わって一般向けにアドバイスしている「認知症ねっと」によると、「食習慣」「運動習慣」「対人接触」「知的行動習慣」「睡眠習慣」の5つのカテゴリーで「認知症になりにくい生活習慣」がいろいろと挙げられている。


 表は筆者がまとめたそのエッセンスだが、こうした生活習慣を実践すれば認知症予防になるといわれる。認知症のリスクを高める糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防にも役立つ。よく言われる「脳トレ」に限らず、各カテゴリーにいま民間企業が続々参入し、「認知症予防ビジネス」の事業を展開している。

●すでに認知症予防で実績を持つ学習塾やスポーツクラブもある

 現状、認知症予防ビジネスで先行しているのは、子ども向け教育指導のノウハウがある学習塾などの教育産業と、身体機能の介護予防で実績があるスポーツクラブである。

 「公文式」で知られる公文教育研究会は2004年7月に「KUMON学習療法センター」を設立した。ここでは認知症患者の脳機能維持、改善のための「学習療法」の研究と、学習療法プログラムの高齢者施設への提供を手がけている。このセンターが開発したプログラムを使った認知症を予防するための「脳の健康教室」は現在、全国で200以上の地方自治体、団体の主催で実施されている。

 学習塾大手の市進HDは、電卓の普及ですっかり使われなくなった「そろばん」を利用する認知症予防プログラムに参入。そろばんメーカーのトモエ算盤も全国のデイケアセンターで脳の活性化、認知症予防のためのそろばん講座を開いている。学習塾の京進は今年6月に大阪市の介護サービス企業シンセリティグループを買収し、「教育サービスで培った学習のノウハウを認知症予防などでも活用する」とアナウンスしている。

 スポーツクラブ大手のセントラルスポーツは、介護保険法が改正された2006年当時から高齢者対象の介護予防プログラムに参入している。認知症予防は、2010年度に東京都板橋区で行われた厚生労働省のモデル事業「ウォーキング型認知症予防教室」を実施して以来、全国の自治体から「認知症予防教室」の運営事業を次々と受託。「認知症予防ファシリテーター」の研修・育成も行っている。

 同業のティップネスも2016年から、大阪市立大学との共同研究で開発したオリジナルの転倒・認知症予防運動プログラムを取り入れた、高齢者向け健康体操教室を始めている。


●IT業界やその他業界からも続々参入

 製薬業界では、湧永製薬や小林製薬が以前から認知症予防のための情報提供に熱心で、湧永製薬は「噛む」ことによるアルツハイマー型認知症の予防効果を説いている。

 生命保険業界では太陽生命が、スマホの認知症予防アプリを2016年から加入者向けに提供している。アプリの開発と運営は東京都健康長寿医療センターの大渕修一博士の監修のもと、IT企業のInfoDeliver(インフォデリバー)が受け持っている。

 医療・福祉領域で事業を展開するITベンチャーのエストコーポレーションは、高齢者が毎日楽しみながら自宅で行うもの忘れ対策の総合通信教育プログラム「脳レク」を開発し、提供中だ。

 禁煙・禁ギャンブルの「健康麻雀」を認知症予防に役立てようと2014年に「日本認知症予防マージャン協会」が発足し、活動中。健康麻雀は厚生労働省主催で毎年開催される「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」の正式種目になった。ゲームソフト開発のシグナルトークは、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の協力でオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」の認知症予防効果を研究している。

 語学の勉強も認知症予防に役立つといわれ、旅行業大手のJTBの子会社JTBガイアレックでは50歳以上対象の英語研修コースを企画・運営している。同業のクラブツーリズムは2016年から旅行の認知症予防効果について東北大学と共同研究を行っている。

●シルバーマネーの掘り起こしのきっかけになるか

 認知症予防でも「食習慣」「運動習慣」「睡眠習慣」に関連したものは、身体機能も含めた介護予防全体にも関連していて、わかりやすい。食事や運動や睡眠の「からだにいい、悪い」は、誰でもすぐ理解できる。

 しかし「対人接触」「知的行動習慣」に属する認知症予防は、国内外でさまざまな研究が行われているものの、その多くは効果がまだはっきりしていない。たとえば麻雀やそろばんや語学を、「認知症を防ぐ効果があります」とおおっぴらに宣伝するのは、まだはばかられるだろう。

 それでも認知症予防という「大義名分」はシルバー市場の掘り起こしには結びつきそうだ。高齢者が「いつ病気になるかわからないから」「いつ要介護になるかわからないから」と使わずに大事に持っているお金も、「介護予防のため」「認知症予防のため」なら、それを使うことへの抵抗感が薄れる。ありていに言えば、企業にとって認知症予防は「使える大義名分」なのである。

 「日本認知症予防マージャン協会」まである麻雀を例に挙げると、「認知症予防にいいらしい」という口コミがひろがって、結果的に高齢者の間で麻雀の遊技人口の増加につながって麻雀牌のメーカーや雀荘や麻雀ゲームソフト会社が潤えば、シルバー市場を掘り起こした需要喚起効果は生まれている。

 「認知症をカネ儲けの口実にするな」と批判されるかもしれないが、仮にこの先、麻雀に認知症予防効果がないと科学的に証明されたとしても、孤独だった高齢者が麻雀のルールを覚えて、同好の仲間ができ、「楽しい老後」を生きることができたのなら、それはそれで社会的意義はあったことになる。

 日本の家計資産残高は1809兆円ある(日本銀行「資金循環の日米欧比較」2017年8月)。その金融資産額のうち高齢者が保有するシルバーマネーは7~8割を占めると言われている。

 2016年9月に総務省が発表した「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)」によると、高齢者1世帯あたりの貯蓄額は2430万円だった(二人以上世帯)。調査対象外の一人暮らし世帯は生活保護受給世帯も多く個人差は大きいものの、あるところにはある。

 「脳トレ」という切り口は門戸が広いため、さまざまな異業種が参入している認知症予防ビジネス。1000兆円を超えるシルバーマネーのほんの一部でも「天下の回り物」に変えて、経済を活性化させるという意味でも、それに期待できそうだ。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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