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司法書士にあり得ない暴力を振るわれた、被後見人の悲劇 信じていいのか「後見人制度」

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(Yahoo!ニュース「現代ビジネス」・08/18)

 認知症の父母を抱えながら、後見人や保佐人としてうまくやってきた家族。そこに突然、裁判所から「監督人をつける」と理不尽な決定が下され、見も知らぬ弁護士や司法書士がやってくる……。

 知られざる問題点をいくつも抱えた、成年後見人制度。今回は、その専門職後見人の中に混じる”不届き者”たちの闇を追う。

司法書士にあり得ない暴力を振るわれた、被後見人の悲劇 信じていいのか「後見人制度」
実際の懲戒処分書(拡大画像で全文が読めます)
専門職後見人が起こした驚愕の「犯罪」
 弁護士や司法書士ら「専門職」の成年後見人が引き起こした事件として、しばしば話題になるのが、認知症高齢者の財産横領事件('15年は過去最悪の37件)だ。

 たとえば、'16年10月には、3人の認知症高齢者の口座から1億1200万円を横領した渡部直樹元弁護士に対し、東京地裁が懲役6年の実刑判決を言い渡している。渡部元弁護士は横領した金を事務所費や借金の返済、キャバクラでの豪遊に浪費したという。

 だが横領事件とは別に、専門職後見人による信じられない事件が起きているのだ。なんと、被後見人に暴力を振るったというのである。

 '16年12月8日、成年被後見人(後見される側の認知症の高齢者など)に暴力をふるった東京都の司法書士を、法務省の東京法務局が処分した。

 その暴力行為と、処分の内容を記した東京法務局長名の「懲戒処分書」には司法書士の実名が載っているが、ここでは東京都内の「T司法書士」とするに留めておく。

 言うまでもないが、司法書士とは、司法書士法に基づく国家資格であり、裁判所などに提出する書類の作成や財産管理業務、不動産登記などを行う専門家だ。

 さて処分書によると、T司法書士は'08年に司法書士になり、2年後の'10年9月、家庭裁判所からある被後見人の成年後見人に選任された。ところがその後、被後見人に対して、2回にわたって暴力を振るったという。

従わないことにいら立って…
 そもそも、成年後見人になりたい専門職は、事務所所在地の家裁に「成年後見人候補者」として自ら登録をすれば、やがて家裁から声がかかるという仕組みになっている。

 登録の時点では、誰の後見人になるかはもちろん不明だ。家裁から就任を打診された時点で、後見人就任を断ることもできる。実のところ、就任を断るケースが多いのは、被後見人が十分な報酬を支払う余裕のない貧困層であった場合だと指摘する専門家もいる。

 T司法書士が事件を起こしたのは、成年後見人になって2年半後の'13年3月頃。処分書には、こう記されている(文中の「被処分者」とはT司法書士のこと)。

 <(T氏は)前後2回にわたり、○県内の成年被後見人方付近路上等において、成年被後見人の胸ぐらを左手でつかみ、右手でその胸の辺りを叩いたり、成年被後見人の尻を右ももで蹴るなどしたものである。……(中略)……以上の事実は、当局及び東京司法書士会の調査から明らかである。被処分者は、成年被後見人が被処分者の指導に従わないことなどにいら立ち第一の行為に及んだものである>

 後見人は、家裁から、認知症高齢者本人の代理権や法律行為の取消権、同意権などの強力な法的権限を与えられている。被後見人とその家族は、財産の処分や契約など、さまざまな社会的な行為について、後見人が認めない限りは事実上何もできない。認知症高齢者らの生殺与奪の権限を握っていると言っても過言ではないのだ。

 そのオールマイティーの権力を持つ後見人から、暴行を受けたのだ。被後見人や家族の恐怖と絶望の大きさは想像するに余りある。

 このため、処分書もT司法書士の行為を<国民の権利の保全に資するべき責務を有する司法書士としての自覚を欠き、司法書士に対する国民の信頼を著しく損なう行為>だと批判し、司法書士法などの違反に当たると指摘している。

 ではT司法書士に対しては、どのような処分がなされたのだろうか。実は、戒告処分という最も軽い処分を受けたにとどまった。司法書士の業務は停止されず、今後の成年後見人就任も禁止されてはいない。


誰に監督する責任があるのか
 処分書ではその理由として、<被処分者は、事実関係を認めて深く反省し、二度と成年被後見人等に対して暴力を行わない旨、確約している事情も認められる>としている。要するに、本人が「反省しました。二度とやりません」と言っている、ということが根拠だということなのだが、どこまで説得力があるかは疑問だ。

 T司法書士のその後だが、事務所のホームページを見ると、これまで通り成年後見業務を続けているようだ。そのページでは成年後見制度について、こう書かれている。

 「正常な判断能力のない方が、悪質な業者らに食い物にされている。(中略)こうした方々の保護者となり、判断能力が減退した方の財産を保全し、権利を守り、不利益を被らないようにするため(中略)成年後見制度をお考えの方は、ぜひご相談ください」

 むろんホームページでは、自分が被後見人に暴力をふるい、処分を受けたことについて、一言も言及していない。

 後見人による暴力事件は、被害者が認知症高齢者や知的精神障害者であることから、中々、表沙汰にならない。そのため、この事件は氷山の一角に過ぎないと指摘する専門家もいる。

 介護施設などで職員による暴力事件が起きた場合にも、被害を受けたお年寄りが自らの思いを語ることが難しく、家族が隠し撮りのビデオなどを設置してはじめて、実態が明らかになるのと、構図は似ているだろう。

 では、こうした専門職後見人の監督責任は、誰にあるのか。それは、彼らを選任した家裁だと考えるのが自然だ。

 しかし、この事件でも、家裁側からは自身の責任に関して、一切の言及はない。

 また、一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表は、家裁に加えて、日本司法書士会が成年後見業務を推進するために作っている公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」にも責任があるだろうと話す。

 「リーガルサポートは、司法書士に業務の教育をし、後見人として家裁に推薦しています。各都道府県に支部を持つ全国組織ですが、会員司法書士による不祥事が複数発覚しており問題視されています。業界団体として、自身の管理・監督責任を重く考えるべきでしょう」

 現実として、司法書士が専門職後見人として家裁に選任されるためには、リーガルサポートの推薦が大きな意味を持つ。法律に定めがあるわけではないが、「ほぼ必須の資格のようなもの」と話す司法書士もいる。業界内の内輪のルール、あるいは司法の”忖度”と言っていいだろう。それほど権力を持つ団体ならば、ひるがえって会員の業務態度にも責任を持つべきだ。

 いずれにしても、今後とも司法・行政そして業界団体が、成年後見制度を現在のように推し進めていくのなら、類似の事件が繰り返されないためにも、全国の家裁や弁護士・司法書士の団体が、監督責任を果たす姿勢を積極的に発信していく必要があるのではないか。

 (つづく)

長谷川 学


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