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問題山積の就労継続支援事業 倉敷・障害者大量解雇 類似ケース続発の懸念

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(山陽新聞・08/07)

 倉敷市内などで障害者就労継続支援A型事業所を運営する一般社団法人「あじさいの輪」(同市片島町)と、同グループの株式会社「あじさいの友」(同)が、倉敷市内にある5カ所の事業所を7月末で閉鎖、これに伴い利用者の障害者約220人が解雇された。同A型事業所は障害者と雇用契約を結んで事業収入から各都道府県の最低賃金以上の賃金を払い、最終的には一般企業などへの就労をサポートするのが目的。運営団体には国や県、市町村から自立支援給付費などが支給される助成措置があるが、事業所の中には障害者の勤務状況や経営実態が不透明なケースが多いと指摘されている。グループ側は施設の閉鎖、利用者の解雇について「経営悪化」を理由に挙げているが、これを機に障害者就労継続支援事業所の運営体制の透明化、監督指導などの在り方があらためて問われている。

 あじさいグループは2014年から倉敷市を中心に就労継続支援A型事業所の運営を始め、現在倉敷市内に8カ所、高松市内に2カ所の計10カ所の同A型事業所を運営している。うち閉鎖を余儀なくされたのは倉敷市内の5カ所と高松市内の2カ所。倉敷市内の閉鎖事業所の利用者(心身障害者)約220人は、あじさいグループと雇用契約を結び、ダイレクトメールの封入、リンゴなどの包装ネットの生産など比較的軽作業に従事していた。障害者就労継続支援施設でこれだけ多くの利用者が一斉解雇されるケースは全国でも珍しい。解雇された施設利用者は他の就労継続支援事業所での再就労を目指しているが、今のところ受け皿となる事業所の協力が得られず、大半の人が再就労のめどがついていないという。

障害者1人当たり17万~18万円

 障害者の就労継続支援事業は大きく分類して、一般企業への就職を目指す障害者が事業者と雇用契約を結ばないB型事業所と雇用契約を結ぶA型事業所、さらに一般企業への就労にスムーズに移行するための就労移行支援施設がある。障害者は段階的にB型事業所からA型事業所へ移り、就労移行支援施設を経て社会参加・復帰を目指す。岡山県内の場合、7月1日現在でB型事業所が189カ所、A型事業所が167カ所、就労移行支援施設が29カ所ある。特に最近はA型事業所の増加が目立つ。2013年4月現在に比べ4年間で72事業所が新規に開設され、167カ所は全国でも上から6番目だ。事業者は社会福祉法人、NPO法人、一般企業などが参入している。

 A型事業所が急増している背景には、B型事業所などに比べ国や県、市町村から支給される助成金が多いことが背景にあるようだ。B型事業所には国、県、市町村から利用者(心身障害者)1人当たり一定額の給付費が支給されるが、A型事業所にはそれに加え特定求職者開発助成金(特開金)が支給される。施設の利用者人数や市町村によって差はあるが、給付費は利用者1人平均で月12万円(月20日間勤務)、特開金は障害の程度によって同5万~6万6千円が支給される。両方合わせると毎月1人当たり17万~18万6千円程度の助成がある。

 事業者は助成金を主要財源として事業所を運営、施設を利用する障害者に仕事をあっ旋したり、自らの事業活動に就労してもらい、利用者の就労支援活動を行っている。しかし、事業活動による収入が少なく雇用している障害者に賃金が払えない場合、事業所の経費を削減して給付費の一部を障害者の賃金に充てるケースも出てくるという。本来、事業所に支給される給付費は利用者の賃金に充当されるものではなく、事業所職員の人件費や事務経費などを助成するのが目的だが、実際には賃金に回されるわけだ。

 岡山市内で清掃関係のA型事業所を運営するある業者は「事業収入が伸びないため、利用者の就労時間を短縮して賃金を抑え、経費をカットし何とかやり繰りしている」と訴える。全国では利用者が実質的な労働をしていないのに虚偽の勤務表を作成して助成金を申請したり、中には利用者が事業所内で1日中読書をさせられたり、ビデオを見せられていたケースも報告されている。この業者は「同業の中には障害者の実働がないのに、架空の勤務表をつくり助成金の支給を申請、また給付費の一部を実働していない利用者の賃金に充てている業者もいる。それでも助成金で事業所の運営は成り立つ」と打ち明ける。つまり極端な表現をすれば、障害者を確保できればビジネスとして成り立つというわけだ。

今春の省令改正で経営難が表面化

 こうした不透明な事業運営の適正化を進めるため、国は今年4月1日に障害者総合支援法の省令を一部改正、A型事業所の事業者に対し「生産活動に係る事業収入から必要経費を控除した額が、利用者(障害者)に支払う賃金の総額以上とならなければならない」という義務規定を設け、給付費の使用目的も「利用者の賃金(工賃)を給付費から支払うことを原則禁止する」旨の規定を新たに加えた。つまり経営の悪化などで給付費を利用者の賃金に充てている事業所は、指定取り消しもあり得る。さらに5月1日には特開金の助成条件に関し、障害者を雇用する場合は「期間を限定しない雇用契約」と、利用者の離職率に関しても「25%(現行50%)未満」であることを義務付けた。

 倉敷市内の施設の監督官庁にあたる倉敷市保健福祉局障がい福祉課の光田武道課長補佐は「給付費の支給を厳密にチェックすることになり、A型事業所にとっては相当厳しい警告となった。事業所はこれまで以上に運営経費の節減に努めないと経営破たんを招く恐れがある。今回のあじさいグループの解雇問題を教訓にして、事業所は事態を深刻に受け止めてもらいたい」と話す。省令の一部改正を機に事業所の経営が一層厳しくなり、あじさいグループと同じようなケースが相次ぐ懸念も出ている。岡山パブリック法律事務所所長の水谷賢弁護士は「障害者は弱い立場なので就労継続支援事業所に関するトラブルは表面化しにくい。しかし、実態は多くの問題を抱えていることは事実」と話す。

行政の指定認可、調査にも問題点

 就労継続支援施設の運営の不透明化を助長させている要因として、監督官庁の指定認可、監督・指導の在り方を指摘する声も強い。就労継続支援事業の指定認可は岡山、倉敷、新見市内の場合は市が行い、それ以外の市町村は県が行う。A型事業所を新規開設する場合は利用者との雇用条件や施設のスタッフ数などが条件となる。新規開設の申請が出された場合、行政の担当部署が一度は現地での立ち入り調査を行うが、それ以降は決まった定期調査や監査はないのが通例。指定期間は一応6年間だが、「その間2回程度の調査が行われ、問題がなければ指定は自動更新される」(岡山県保健福祉部障害福祉課)。行政担当者の間では他県に比べ岡山県はA型事業所の数が多く、立ち入り調査は現状で精一杯という声も聞かれる。

 A型事業所の指定認可に必要な職員の定数にも問題がある。指定条件では施設管理者とサービス管理責任者、職業指導員、生活支援員の4人が必要だが、施設管理者とサービス管理責任者は兼務できるため、事実上は3人の職員が20人前後の利用者を管理しているケースが多い。このため利用者への手厚いケアが本当に施されているのかどうか疑問だ。特に最近はA型事業所の場合、精神障害者の利用者の増加が目立っており(グラフ①参照)、精神障害者の場合は、その時の状態で欠勤したり、長期継続の勤務が困難なケースが多い。このため熟練の職員の対応が必要だが、専門知識を持った職員は少なく、対応が十分でないというのが実態だ。

 この結果、1年以内に障害者が1人も一般企業に就職できなかった事業所が、A型で約7割、B型で約8割に上っている(グラフ②参照)。この数字は最近の精神障害者の利用者増の中で、就労指導がいかに難しいかを裏付けている。岡山県精神障害者家族連合会で、ボランティア相談を受け持つ担当会員は「A型、B型にしても施設を利用する精神障害者の場合、マンツーマンぐらいの熱心なケアがないと就労指導は難しい。仮に助成金目当てで障害者を利用しているなら残念だ。障害者は弱い立場にあるので誠実に取り組んでもらいたい」と話す。

基準の厳格化だけでは解決しない

 今回の倉敷市内で起きた就労継続支援事業所の大量解雇は、単に同事業所の問題にとどまらず、国の障害者就労継続支援事業の制度の在り方に疑問を投げかけている。給付費などの不正受給が増える中で、国は社会保障費の削減もあって支給基準を厳格化する方針だが、それによって事業所数が減少すれば、その影響を受けるのは障害者だ。まずは行政による就労継続支援事業所への立ち入り調査の回数を増やし、事業所の適正運営を促す方向で問題の解決に当たることが先決だ。そのうえで悪質な事業所には指導、認可取り消し処分を行うのが筋だろう。今回の倉敷の事業所のようなケースが多発しないよう早急な取り組みが求められている。

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